いちよーっす( ̄▽+ ̄*)……紆余曲折を経て、ようやくここまでたどり着きましたです。
セーちゃん曰く8話難民の皆様を救う事が出来たのだと信じ、その続きを本日お届けいたします。
いつもながらセーちゃんの言い回しは面白いです。
さてこのお話は魔人sei様の をお題として頂いております。
現代設定パラレル蓮キョ。
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです♡
前話こちら【 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 】
■ 恋する生徒会長 ◇9 ■
初めてコトを成した疲労感は相当だった。
いつの間にか俺たちは眠りに落ちていて
一つのベッドの上で素肌のまま、互いに寄り添っていた事に気付いたのはそれから数時間後のことだった。
視界に入った穏やかな寝息を奏でている最上さんを見つめて
ふいに自分の口元に優しい笑みが浮かぶ。
―――――― やっぱり、かわいい……
男嫌いの噂を幼なじみに流されたあと、いたずらに告白してくる男の数にうんざりした…と最上さんは言ったけど、中にはそうじゃない奴もいたはずだと俺は思う。
第一、俺もそう思ったんだ。
女学園の生徒会室で、初めてこの子の笑顔を目の当たりにしたとき
その笑顔に騙された男が何人いると思っているんだ…と、俺は心の中で悪態をついた。
自分の魅力を君はいまいち理解していないんじゃないの?
それは、君に躊躇なく暴言を吐いていた、あの幼なじみのせい?
眠りを妨げないように、と静かに身体を起こし、俺はベッドからそっと降りた。
間接照明を点けてから乱雑に散らばった自分の服を拾い上げ、ついでに私服に着替えてしまおうと制服を片付ける。
下着とチノパンを穿いたところで時間を確認し、上半身は裸のまま二度瞬きをした俺は、このとき生まれて初めて血の気が引くのを体験した。
「 最上さん、まずい!11時回ってるよ!! 」
起こさない様にと静かに行動していたのは何だったのか。
我ながら呆れるほど大声を出して彼女の身体を揺すった。
「 最上さん! 」
「 …ん……あ、寝ちゃった… 」
「 何を悠長な!帰宅時間とっくに過ぎているのに。きっと今頃君のお母さん、心配しているよ。ごめん、気付けなくて。実は俺もいま起きたところで… 」
高校生のバイトが許される時間は22時まで。
けれど最上さんのバイト先である、だるまやでの彼女の勤務時間は21時までだった。
自宅に送り届ける時間はいつもだいたい9時30分頃なのだ。
横向きの姿勢からコロン…と仰向けになった最上さんは、左手の甲を額に押し当て、気怠そうにまた瞼を閉じた。
大丈夫ですよ…と呟いた彼女の声が微かに届く。
「 最上さん、寝ぼけてるのか?大丈夫じゃないって! 」
「 …ふ…。敦賀さんの方がよっぽど焦ってる…。
でも、本当に大丈夫なんです。敦賀さん、お買い物のとき、モー子さんから電話が来たじゃないですか 」
「 ……うん 」
「 そのとき、モー子さん家に泊まることになったので母には帰らないと連絡しておいたんです。だから、大丈夫ですよ 」
寝そべった彼女の肩脇に手を置き、最上さんを見下ろした俺を彼女がそっと見上げる。
彼女の目にはもう、怒りの感情は微塵もなく
そこにあるのは落ち着いた光彩だけだった。
「 そうだったんだ。なんだ。俺、本気で焦った… 」
「 ごめんなさい。言っても意味ないかな、と思って敦賀さんに伝えていませんでした 」
「 いや、それは別にいいよ 」
「 …でも、一つだけ問題が… 」
「 問題? 」
「 はい。実は、モー子さん家には10時までに行くと伝えてあったので… 」
「 ……いま、11時過ぎてるけど? 」
「 ですよね。もう訪問する訳にもいかないし、いまさら家に帰るわけにもいかないし…。だから私、このままここに泊めてもらったらダメですか? 」
寝そべった姿勢のまま、甘えるように小首を傾げた彼女のそれに信じられない思いで俺は瞬きを繰り返した。
いまそのセリフをはいたのは本当に最上さんだろうか?
俺に抱き寄せられて
真っ赤な顔で俺を懸命に遠ざけようとした純情乙女の君らしからぬセリフ。
君は本当にそれでいいの?…って聞こうとしたけど
その言葉は直ぐに飲み込んだ。
二人でいられる時間が増えることは、今の俺には歓迎しか有り得ないから。
「 ――――― いいよ。別に… 」
「 良かった!まだ書類も全然やっていませんしね 」
あっけらかんと笑顔を浮かべた彼女はまるで何事も無かったようにそう言った。
だから、かな。
俺が君のことを抱いたんだってことをちゃんと意識して欲しくて、俺が部屋の明かりを点けてから身体を起こした最上さんと向き合う形になるように俺はベッドに腰を下ろした。
「 最上さん 」
「 はい? 」
「 胸、はだけてるよ。裸のまま起き上ったりするから… 」
「 い?!…きゃわあああぁぁぁぁっ!!! 」
「 予想通りの反応。でも、なんで胸隠すの?
いまさら照れなくてもいいだろ?俺、暗がりだったとはいえ君の全部を見たし、君の隅々まで触った男だよ? 」
「 そっ!!言わないで下さい、そういうことは!! 」
「 なんで?事実だろ? 」
「 だから、言わないでっ!! 」
真っ赤な顔で力強く言い放った最上さんは、めいいっぱい腕を伸ばして俺を遠ざけようと頑張る。次いでクスクスと笑った俺の顔を覗き込み、彼女は少しだけ神妙な瞳を浮かべた。
床に落ちている俺の服を指さす。
「 敦賀さん? 」
「 ん? 」
「 あの…そのTシャツ、私が着ても良いですか? 」
「 うん?―――――― …いいけど、俺が着てたやつだよ?新しいの出すけど 」
「 ううん、それでいいです。ありがとう、お借りしますね 」
はにかんだ笑顔は可愛くて
手にしたTシャツを彼女に託すと
最上さんはどこか嬉しそうに俺の服に腕を通した。
「 最上さん、もしかして嬉しいの? 」
「 うっ…!……うれしい…ですけど… 」
「 ふっ…。嬉しいんだ? 」
「 何か、おかしいですかっ?! 」
俺の気分はだいぶ柔らかに高揚していた。
嬉しい…と、彼女がはっきり答えてくれたのが嬉しかった。
彼女の初めてを貰えたこと
彼女と初めてを成し得たこと
似非恋人契約を発動させてから約二週間。
俺に色々な初めてを経験させてくれた彼女を、俺は手に入れたんだ、と思った。
高校卒業と同時に別れる…なんて冗談じゃない。
そもそもこうなってしまえば似非恋人契約なんて解除してもいいはずだ。
俺は最上さんと本当の恋人として向き合いたい。
この気持ちを彼女に伝えるべきだ。
それですべてがうまくいく。
「 いや、おかしくて笑っている訳じゃなくて、ただ俺も嬉しいなって思って 」
「 ……? 」
「 だって君、やっぱり初めてだったから 」
「 !!…っちがっ!初めてじゃ…! 」
「 初めてだろ?シーツに証拠が残ってる… 」
赤く染められたシーツのそれを目にした途端、最上さんは一発逆転を狙う野球選手のように大袈裟にスライディングをかまして布団の上にかぶさった。
「 うにゃあああぁぁ…!! 」
「 身体で隠したところでもう遅いけど… 」
「 敦賀さん、気付いていたんですか?いつから… 」
「 いつからも何も…。俺、始めからそう言ってただろ。嘘だって判ってるって… 」
うつ伏せた彼女の顔は見えなかったけど
少なくとも最上さんの首は真っ赤に染まっていた。
少々の間を置いて最上さんが顔をあげる。
「 …怒っていますか?嘘をついたりして 」
「 俺が怒っているように見える? 」
「 見えないです。良かった、敦賀さんで…。最後までしてもらえたし、想像よりお腹も痛くないし… 」
「 …え? 」
「 男の人って、初めては重いから嫌っていう人、いるでしょう?それにすっごく痛いって聞いていたから、実際はどうなのかなってずっと思っていたんです…… 」
――――― ずっと…?
彼女のそのセリフに、俺は耳を疑った。
高揚していた自分の気持ちが萎れていくのを感じる。
「 それは、男にもよると思うけど… 」
「 …そうですよね。でも、少なくとも敦賀さんは嫌じゃなかったって事ですよね。それを聞いて安心しました。
あ、責任取れとか言うつもりありませんから心配しないで下さいね?ありがとうございました 」
ペコリ…と頭を下げられて、俺はそれ以上の言葉を吐き出すことが出来なかった。
それに、ありがとう…の意味が判らない。
気持ちが全然追いつかなくて
彼女が口にした言葉を何度も頭の中で繰り返した。
「 敦賀さん 」
「 ……なに? 」
「 作業、再開しましょうか。私、コーヒー淹れてきますね? 」
「 ……うん、ありがとう 」
――――― ねえ、なんで?
どうして何もなかったみたいに、あの可愛い笑顔を浮かべるの?
俺、君に責任を取ってくれって、言われた方が楽だった。
一体君はどういう気持ちで俺のことを受け止めていたの…?
ぐるぐるとその考えばかりが頭に渦巻いて、俺はほぼ無言で彼女と一緒に書類を片付け、全ての作業を終えた翌日に最上さんを自宅に送り届けた。
「 敦賀さん、ありがとうございました。あとは学園祭当日を待つのみですね 」
「 そうだね。手配も済んだし、あとは電話で用を足せるようにしてあるから… 」
「 はい!校内に目を向ける時間が増えて、敦賀さんのやり方は本当に良いと思います。じゃあ… 」
「 うん 」
初めて自覚した、最上さんへのくすぶった想いを伝える事も出来ず
かといって渦巻く疑問を彼女にぶつけることも出来ないまま。
一つの答えが俺の脳裏に浮かんでいた。
―――――― ひょっとしたら俺は、都合よくこの子に利用されただけなのだろうか。
もしかしたら最上さんは
ハジメテは重いから嫌だっていう男のために、俺にその役を求めたのかも…。
彼女に問う事をしなかった自分のことを
俺は結局、激しく後悔することになる。
なぜなら最上さんは、まるで俺のその考えを肯定するかのように
この後、俺と顔を合わせようとはしなくなった。
まるでもう俺なんか用済みだと、言わんばかりに…。
⇒ に続く
嵐の中の蓮君…。ハッキリ言ってもう、合同学園祭どころじゃありません(笑) ←笑う所じゃない。
予定では、あとちょっとで終わりです。でも一葉脳内の予定って、すぐだと思ってもすぐじゃないからな… 読み違い、多々発生中。
そう言えば、完結してからストレートに読みたいと考え、踏みとどまっていた読者様っていらっしゃるのでしょうか。
でもごめんなさいね。限定話の救済措置は一度きりです。
公開期間は3日間。何度か目を通して下さった方もいらっしゃったかと思います。読んで下さったみなさま、ありがとうございました。完結までどうぞお付き合い下さいね。
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